不適切な足回り改変がされている中古車を譲り受け、できるだけ費用をかけずに我慢できるレベルにまで調整できないかとのご相談を以前からお受けしておりました。そのお車の足回りは一般に「車高調」といわれるもので、本来、自動車競技車両に装備される特別なものです。
綺麗な舗装路のサーキットで行うレースでも、未舗装路を駆けるラリーでも車高調は使用され、部品価格で70万円とか100万円とかそれ以上といわれる大変高価な部品で、その調整にたくさんの時間を費やします。
一見したところ、そのお客様の車高調はサーキットスペックで、調整範囲内では一般道を快適に走れるセットは難しいとご説明申し上げましたが、
適切な足回りとその乗り心地とはどういうものなのか…
そして、山坂道を安全に運転するということはどういうことなのか…
それらを伝えるには、実体験しかないと思いました。別のお客様のご好意で、適切に整備されたお車の提供を受け、僕がハンドルを握り同乗いただくことにしました。
↓そして直後、お客様からいただいたご感想を以下に掲載いたします
*********************************************************************************
先日は貴重な体験をさせて頂き、本当にありがとうございました。
「鉄は熱い内に」あの時の衝撃を一刻も早くお伝えしたかったのですが、言いたいことが山ほどあって全然まとまらず、今に至りました(>_<)もうキレイにまとめるのは諦めて、書き殴ります(笑) 本当に率直な意見だけ言いますと、
-
1.僕も間違ってました。
2.いろいろ。
以下、詳しく(できるだけ簡潔に書くつもり)。
まず、工場で僕の車の整備をしてもらいながら、たけしさんが新車からメンテナンスされ、今夜借りてこられるお車のスペックを伺った時の印象から。
平成15年式 トヨタ ヴィッツ 1000cc 5MT ショックアブソーバはモンローのリフレックス。
通勤用および家族用、1000cc、20万km以上走行、オイル交換等メンテナンスはしっかりしている。ということでしたが、所詮は1000ccのヴィッツ。たけしくんスペシャルの足回り(乗り心地)にはすごく興味がありましたが、レンタカー等で僕が知ってる1000ccヴィッツの体験から、
走りに関しては、『何ができんねん?』
失礼ながらそう思ってました。当日、実車を見てもその印象は変わりませんでした。
白色、4ドア、樹脂ミラー&バンパー、鉄ホイール、13インチ、、、玄人好み過ぎるマジで最下級グレード・・・
助手席に座って初めて印象が「少し」覆ります。フロアセンターから伸びるマニュアルシフト、ナルディのハンドル、ちょっと長いんじゃね?なハンドルボス、見やすい位置にセットされ、且つ適度な大きさの追加タコメーター。乗車してからマンションの駐車場を出るまでの間で、サスペンションがノーマルでないことはすぐわかりました。僕が知ってるヴィッツと比べて、しっかりし過ぎ(笑)
マンションの駐車場を出て、1つめの十字路を左へ曲がるまでの間で、しなやかな足の動きに驚愕(゜д゜)!します。そして、橋の継ぎ目の直前、僕の車だったら激しく上下に振られ、3点式のシートベルトでボディブローを食らう(腹部を締められる)大きく凹んだ路面を、何事も無いかのようにスゥーっと、、、僕にとってはとんでもない勢い(吐きまっせ、な勢い)で通過(゜д゜)!
ココまでで十分びっくりしたんですが、本番はココから・・・「山坂道へ行きましょう!」とお誘いを受けていましたので、昔、走り屋で賑わった某所かな?と勝手にイメージしてたんですが、まさかのHNS峠(+_+)
一応舗装路ですが、狭くてガタガタ、高低差が大きくUターンに近いヘアピンカーブ、ブラインドコーナーなどなど、、、一般道を快適に走れる足は峠道で本領発揮。否!峠道も一般道の一部なのか??
車1台分ちょいのクソ狭い、ガッタガタのバウンドゾーンを滑るように通過したと思ったら、最初に現れた右カーブの手前で一瞬のブレーキング!
ハンドル切った?と思ったら、速攻でアクセルオン。。。(゜д゜)
スタビライザーの無い車体が大きくロール、
アウト側(左側)80扁平の頼りない左前輪に荷重が乗ります。でもイン側の右前輪は浮くことはない。イン側の足が伸びる伸びる。そうしてクリアするカーブもあれば、ヘアピンなどキツいカーブでは、アクセルワークとハンドル操作で少しずつ向きを変えながら、次のカーブへ向かって滑らかに脱出!
やられましたよ。。。お買い物ヴィッツで、あんな走りができるなんて・・・
そして、峠を下りてコンビニで見せてもらった155/80R13の紛うことなきウンコタイヤ。僕が今まで信じて来た考え方では絶対に到達できない世界でした。いろんな意味でショックでした。
「アンダーパワーな車で練習する」という言葉の意味。
「タイヤを使う」「使い切る」という言葉の意味。
「安定した走り」「腕を磨く」という言葉の意味。
全て間違ってました。一般道を快適、且つ安全に走れる足の輪郭が見えて来ました。同時にサーキットを前提にした足と一般道を前提にした足の違いも理解できるようになりました。
途中から実況のようになりダラダラと・・・もし最後まで読んで頂けてたら申し訳なく、ありがたく思います。これからもご指導よろしくお願い致します。
***************************************************************************************
たくさんのご感想を頂戴し、大変うれしく思います。そして僕が伝えたかった概要を体感いただけたのではないかと思います。
安全運転のための自動車整備や運転技術は一朝一夕にはなりません。少しずつお伝えしていこうと思いますので、今後ともよろしくお願いします。
たつや says
読み応えのある内容でした。私自身、適切なセッティングのクルマを所有したことがあるのかは甚だ疑問ですが、オーナーの数、使い方の数だけ適切があるような気がします。近年多い手頃な車高調でベッタリ下げて、ピーキーな挙動を楽しいと感じる人ならそれが快適なんでしょうし、バネなど切るもの、炙るもの、ハネるの上等、マンホールでフロアから散る火花こそ漢のクルマ!という人もいるでしょうし、メーカーが金と時間をかけてセッティングしたノーマルこそが一番と思う人もいるでしょうし、シトロエン命!ハイドロニューマチック以外乗らない!とう人も当然それが快適だからでしょう。また、一旦ホワイトボディにして然るべき当て板、スポット増しによる補強の上、然るべきロールケージを溶接によって組んでボディを仕上げていない事には足回りうんぬん等以前の問題、というのも真なり、だと思います。車高調で100万なんて値段があるだけマシ、ボディと足は最重要項目なので定価はありません!すぐにOHできるように機材とスタッフを積んだハイエースごと足回りの必要部品の一部です!という一般道路を走るために組まれた完全に保安基準に適合したクルマだってありますしね。要はその人の使い方と好みによって正解は無数に、あるいは正解の無いのが正解かな、とも思います。あえて言うなら、前述のようにホワイトボディから組み直したクルマは比較的誰でも(スポーツ走行ではなく街乗りだけでも)効果が解り易く、安全で長距離を乗っていても疲れないセッティングを作り易いのではないかと思います。コストやボデイの寿命などは度外視になるのが難点ですが(笑)
たけし says
たつやさん、たくさんのコメントありがとうございます!
たつやさんは、自動車に対する造詣が非常に深く、さらにモータースポーツ経験もおありですから、自動車の楽しみ方も幅広く、いつもお話が尽きませんね(^^)
迷いなく自動車の方向性を決められるということはすばらしい感性です。
誰もそれを否定するものではありません。
しかし、
ほんとうにこの車の状態でいいのか?
運転の仕方は間違っていないか?
いったい何がこの車の魅力なのか?
と迷っていらっしゃる自動車オーナー様がたくさんいらっしゃるのも事実です。
僕は自分の経験から何かお手伝いできることがないかという観点で、今回のような同乗体験をお勧めしています。
たけちゃん says
素のクルマの良さ引き出した走り、理想的ですね
機会あったら同乗体験してみたいです。
たけし says
たけちゃんさん、ありがとうございます。
僕は、上級ドライバーと比較すると程遠いレベルですが、一般公道法定速度範囲内で、車の秘めた性能を十分ご体感いただけるのではないかと思います。
こちらのヴィッツもそうですが、同じころに販売開始されたファンカーゴ、プロボックス、カローラ系など、ボディーが非常にしなやかですから、アブソーバの交換と、サスペンションアームの調整で驚くほどしっかりした車になります。