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魅惑のマニュアルトランスミッション (アルファ156 V6 2.5 6MT E-932A1 クラッチ交換)

タンッ、タンッ、… とシフトセレクトの度、クランクシャフトからトランスミッションへ確実なトルク伝達。

「ああ、これがプル式クラッチ本来のフィーリングなのか…」

クラッチオーバーホール直後の試運転。連日、温室のような工場で消耗した体力が一気に回復します。それはカークーラーではなく、適切に機能する手動変速機とアルファV6が奏でるキレのある音色のせいでした。

平成11年式 E-932A1 V6 2.5 6MT 走行距離139,000km


クラッチ接続のペダル位置が随分上に移動し、クラッチ交換時期にさしかかったアルファロメオ156 V6 2.5。特に体感するひどい滑りはありませんでしたが、大きく滑り出してからでは手遅れですので分解整備を実施することにします。

クラッチを交換するためには、エンジンとトランスミッションを一旦分離しないといけません。さらに156のようにFFの車両はエンジン+トランスミッションの一体重量物がボンネット下に納まっています。この大きな重量物がわずか3点のマウンティングでボディに固定されているのです。

しかも、このうちの2点はトランスミッションに接続。トランスミッションを離脱する今回の作業、エンジンは片端を支える1点のみになりますので作業中はこのように別の手立てで支持増設する必要があります。

エンジンルーム上に設置した赤いエンジンハンガーと、下からはトランスミッション脱着時に微妙にエンジンを上下させるための可動式ツッパリ棒。重量のある物を高所で扱うとても神経を使う作業です。

まず、エンジン+トランスミッション下に横たわるサスペンションメンバーの離脱。これが想像以上に重く、一旦リジッドラック上に配置しましたが、この場でさらに分解して移動しました。

↓車体から離脱したトランスミッション。

↓そして、エンジン側に装着されているクラッチ本体。

クラッチを分解しますと、非常に綺麗に磨耗したクラッチディスクが現れました。強力なトルクを断続する猛々しい部位に乗り手の優しさが感じられるうれしい瞬間です。

初めてのアルファロメオ、プル式クラッチの組み立てです。失敗のないように eLEARN で確実な手順を確認します。クラッチカバーをフライホイールに締結している特殊ボルトはリブビット。重要な場所ですからトルク管理を入念に行います。今回のクラッチ部品はお客様が手配してくださった社外品ですが、純正同様 Made by Valeoですから問題はないでしょう。

逆の手順で組み上げていきます。アルファは特にそうですが、組み立て手順を少し間違うと随分後戻りしないといけない排他的な(?)構造です。分解時に十分記憶しておく必要があります。

↓ステアリングラックの固定雌ねじに痛みがありました。前回他所で作業したときに痛めたのでしょう。修正タップを通します。

アルファはこのようにサスペンションメンバーにステアリングラックを直接固定しています。ゴムブッシュを介さないためダイレクトなステアフィールですが、サスペンションの振動がステアリングにモロにきますのでハンドルポストが盛大に暴れます。これはステアフィールを重視した結果だと考えています。

そして無事完成し、仕上げに好評のMOTUL 8100 X-cess 5W-40 注入。まるで排気量が小さく、高回転型に変貌したような軽快なエンジンの吹け上がり。

クラッチの断続節度感の向上と相まって2.5Lの排気量を感じさせない仕上がりになりました。このフォーリングは足回りが適切に動作していることも関係しているかもしれません。次は交換時期を迎えたタイミングベルトですね。

普段は国産車の整備をしている僕に貴重な経験をさせていただき、オーナー様には大変感謝しております。今回もご用命誠にありがとうございました。そして、不足工具を買いにクルマを走らせ、また締結しにくい場所の特殊工具製作のアイデアを提供してくれた後輩N君に心からお礼を申し上げます。

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