ラウムにお乗りのお客様から乗り心地改善に関するご相談がありました。
平成16年式 CBA-NCZ20 1NZ-FE 4AT 走行距離 36,000km
中古車で購入当初から乗り心地が悪く、特に長距離高速走行では、以前お乗りになられていた軽自動車よりも疲労が蓄積するとのこと。最近、後部座席に同乗されてたご夫人が今までにない酷い車酔いをされたとのことで、何とか改善できないでしょうかと、大変困惑されている様子でした。トヨタ系列のディーラー中古車です。走行距離を改ざんするなどの細工はないでしょう。まずは試運転をしてみます。できるだけ近い状況で乗り心地を体感するために高速道路に持ち込みます。
確かにひどい乗り心地…
特にリアがドタバタと落ち着かず、3万キロ走行で早くもショックアブソーバが痛んでいるのでしょうか?設計段階で何か設定を間違っているような悪い乗り心地です。
このラウムという車種、車の裏面を眺めるとわかるのですが、プラットフォームやサスペンション形式は当時のヴィッツと共通。フロントはマクファーソンストラット、リアはトーションビーム。ヴィッツは上モノが軽く、このサスペンションでも問題はないのでしょうが、ラウムは電動スライドドアやBピラーレスなどで車両重量がヴィッツよりはるかに重いです。カタログデータ上で約200kgの差があります。
ヴィッツが基本設計と考えると、派生亜種であるラウムは相応のセッティングを施さないといけません。しかし、製造コストその他で折り合いがつかなかったのか不相応なショックアブソーバが装着されているようです。乗り心地の改善のためには、まずきちっとした減衰特性のショックアブソーバを組むことが大切です。足回りが落ち着かないと訴えると、コイルスプリングの強化や車高ダウン、それにスタビライザの強化を最初にすすめてくる業者には要注意です。
一般公道を走るラリー競技の経験があればわかることなのですが、ショックアブソーバで大まかな足回りのセッティングは完了します。コイルスプリングやスタビライザを変更するのは、そのずっと先のことで、変更が必要ない場合もありますね。特にスタビライザに関しては、取り払うというセッティングもあるくらいです。
さて、今回のショックアブソーバのチョイスはモンローのリフレックス。
ラウムには残念ながら設定がありませんので、ヴィッツRS(NCP13)用を流用します。
リアは若干ショートストロークになりますが、スプリングの変更がありませんので車高は変化しません。リバウンドストロークの縮小は通常走行では問題にならないでしょう。
フロントも組み付け、最終調整の前にお客様に同乗いただき変化の具合を体感いただきました。
装着した直後は多少荒さが残りますが、大まかな改善がわかります。モンローリフレックスはいいですね。ヴィッツRSという多少走りを意識した車種の設定通り、しっかりした減衰特性です。車両重量のあるラウムにはよくマッチしていると思います。特にリアのドタドタ感がなくなり、路面を確実に捉えるようになりました。
細かい路面の凹凸はよく吸収し、大きな路面のうねりに対しては腰のある良い足回りです。試運転と各部馴染ませの後、サスペンションアームを作動中心で落ち着かせ、最終トー調整を経て完成としました。ご家族の皆さんで快適にロングドライブできることを心よりお祈り申し上げます。