「最近クラッチペダルを踏み込むと「シャー」という異音が大きくなってきた。クラッチが滑っているわけではないけど10万キロ走行の節目でオーバーホールをお願いしたい。」
とのことで、クラッチ交換を承りましたジムニーシエラ最終型です。
平成27年式 ABA-JB43W M13A 5MT 走行距離 100,000km
大変希少になった3ペダルのマニュアルトランスミッション車ですが、自動車を操る「感」が根強い人気の理由の一つです。
昨今社会問題になっているペダルの踏み間違いが構造的に起こりにくく、見直されている方式でもあります。
さて、クラッチペダルを踏み込んだ時に発生する異音ですが、レリーズベアリングやその近傍の不具合で間違いないと思います。
ただ、マニュアルに熟練したお客様が、たった10万キロ走行の国産車でクラッチ交換とは、かなり早めな印象です。
早速、クラッチ各部品を見てみることにしましょう。
エンジンとトランスミッションの接続面に備わるクラッチ部品。
交換のためにはトランスミッションを車体から離脱する作業を伴います。今回は、エンジンとミッションを連結しているM12のボルト5本が強烈に硬く、狭く奥まった場所だったことも重なり、離脱に難儀します。
取り外したボルトには癒着の痕跡がありませんので、単純に新車製造時の締め付けが強かっただけかと思いますが、同作業で苦労された動画や記事をWebで多く見かけました。
初期のG13Bエンジンから、こちらのM13Aエンジンへの変更に伴い、締結力の向上が図られた旨、整備要領書には記載があります(63Nm → 94Nm)。
にしても硬すぎる。スナップオンの24インチブレーカーバーがしなるほどの強烈な締め付けが、「パキン!!」と大きな裂音と共に解かれるや、ソケットもエクステンションも勢い余って接続箇所がバラバラになり、作業場の床に散らばります。
この日は最高気温が38.7度と、体温を上回る猛暑の作業場。ブレーカーバーのグリップに力を込めるたび、まるで雑巾をしぼるように体中から汗が吹き出します。
そして、すべての締結ボルトを離脱後、小さめといっても一人の人力では辛い重さのマニュアルトランスミッション本体を、ジャッキの支えを借りて慎重に車体から降ろしました。
この中心にあるのが、問題のレリーズベアリングです。
指で回転部を触ると、シャーシャーと痛んだ音が鳴ります。
接触するクラッチカバーのダイヤフラムスプリング先端は、摩耗がかなり進んで段差ができていました。
一方、クラッチディスクの摩耗はそれほどでもなく、残り溝も十分でまだまだ使えそうです。
こちらをご覧になったオーナー様は、クラッチの寿命がディスクの摩耗以前に訪れることに違和感を覚えるとおっしゃいます。
それは全く同感で、約30万キロ耐久した同じサイズのアイシン製クラッチ(トヨタ ヴィッツ SCP10用)と比較してみました。
一見、共通部品か?と思わせるほど大きさ形状が似ています。
下はレリーズベアリング比較です。ダイヤフラムスプリングとの接触部の幅が違うことがわかります。
ヴィッツの方は接触部の面圧が下がるため、長期間使用したにもかかわらず、ダイヤフラムスプリングの摩耗がそれほど進んでいません。
さらに、同じアイシン製でもダイヤフラムスプリングの形状に工夫が見られ、より平行にレリーズベアリングを接触させるためだと思うのですが、内側先端付近が湾曲しています。
これら外観以外にも違いがあるかもしれませんが、結果的にヴィッツは溝が消えるまでクラッチディスクを使い切ることができました。
左:ヴィッツ(アイシン製)、右:ジムニーシエラ(アイシン製)

トヨタ純正部品に刻まれたトヨタロゴ。他と一線を画す品質の証であり、特にトヨタにおいては社外品の選択肢は無いなと思うのです。
偶然外観が酷似しているクラッチ部品に遭遇しましたが、今回は適合確認をしている時間がなくスズキ純正部品を選択しました。
JB43W, JB23W共クラッチ部品は共通のようです。トヨタ純正がうまく流用できると面白いかもしれませんね。
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見た目は似ていますが、細かな部分で違いがあるのですね。
小さな部品の一つ一つに品質の違いがあるところが、世界のトヨタといわれる所以なのでしょうか。
ゆうや様
コメントありがとうございます。
こちらのクラッチ部品もそうですが、ファンベルトやブレーキパッドなど、定期交換部品や消耗品といわれる部品でさえも、トヨタ純正部品のラベルが貼付されたホンモノとその他類似品では歴然と耐久性に差があります。また、プリウスなど電子部品をたくさん使った複雑なハイブリッドカーが数十万キロをほとんどトラブルなく走破できたり、他では真似のできない高品質を感じます。