フォルクスワーゲン ポロが入庫いたしました。
『冷間始動はアクセルを踏んでいないとエンスト、また、エンジンが暖まっていてもエアコンONするとすぐさまエンスト、バッテリーが原因かと交換してみたが全く症状が変わらなかった。エアコンを掛けられず、不安定な状態ではとても乗れない。近々遠出をする予定なので、診断をお願いします。』
とのご依頼です。
平成13年式 GF-6NAHW 走行距離55,000km
初めてご来店のお客様で、詳細にお車のことをお尋ねしました。
こちらは昨年、遠方の中古車販売店でご購入。その後、ウォーターポンプやエアコンコンプレッサーといった多額の費用が必要な故障が発生し、また今回のトラブル。初めて手にされた輸入車の故障の多さに閉口されているご様子でした。
車齢が10年を越える輸入車は、(もちろん新車からのメンテナンス履歴にも大きく依存しますが)頻繁で丁寧なメンテナンスが必要です。6N後期のポロは、歴代ポロの中で僕の最も好きなデザインです。さらに、このサイズでこのしっかりしたボディー剛性の車は他にないでしょう。適切な時期に適切なメンテナンスを施し、魅力ある車を是非大切に乗っていただきたいと思います。
さて、診断を開始します。
ご入庫時、不調はすでに発生していました。アイドリングが低く、エアコンコンプレッサーがONと同時にエンスト。どうもアイドルアップ機能が全く働いていない様子です。エアクリーナボックスを開けると、スロットルバタフライ付近に大量のカーボンの堆積が見られましたので清掃しますが、症状は全く変わりませんでした。
次にVCDSに接続し、フォルトを確認します。灰皿の奥に紫色の通信ポートがあります。
最近不調だったVCDSですが、一回で通信できて、スロットルポジションアクチュエータのフォルトを検出していました。症状から僕が予想していた不調箇所と合致したのでラッキーでした。
“Output open”とありますので、おそらくスロットルアクチュエータ内部のモーター断線でしょう。モーター付近に軽くハンマーで衝撃を与えると、アイドルアップしますので間違いありません。
問題はスロットルポジションアクチュエータの価格です。スロットルボディーと一体型で新品は10万円近くします。高額なので、新品社外品、中古品などを候補に検索しますが、どれも決め手に欠けて決断できません。しばらくお客様にはお待ちいただくことにしました。
また、部品検索とともに僕が事前準備しないといけないことがあります。スロットルポジションアクチュエーターの初期化手順の確立です。このような部品はただ交換しただけでは正常作動しないことがあります。
外部通信機器での遠隔調整になりますので、VCDSで作業可能か確実にします。そのためには正常作動部品が必要になります。不良パーツでは次の画面のように、エラーで弾かれます。
何か方法はないかと、違うキーワードでWebサーチすると、運良く軽微なプラスチック部品の損傷のためだけにジャンク品扱いになっている安価な中古部品が見つかり早速取り寄せ。
装着後、セッティングを行い…
無事 ”ADP. OK(アダプテーションOK)” の文字が出ました!
試運転の結果、部品はジャンクと言う扱いでしたが至って良好で、お客様に経緯を説明し、修理完了といたしました。今回のVCDSのスロットルアクチュエータの初期化操作ですが、スロットルボディーを清掃したときにも実施するのが理想かもしれません。
さらに、VCDS接続しましたので、メンテナンスインターバル(インパネ内の”service INSP.”表示)のリセットも実施しました。この度はご用命誠にありがとうございました。今後もできる範囲でお手伝いしますのでどうぞよろしくお願いします。